クエンティン・タランティーノが贈る“復讐劇”

黄色のトラックスーツ、金髪美女に日本刀
美女たちが血に染まるバイオレンス
クエンティン・タランティーノ作品4本目にして、集大成となる本当にやりたかった“復讐劇”が完成した!
時代劇のようなセットとシチュエーション
現代日本なんだけど、仮面を付けたヤクザ全員が日本刀で襲いかかる
香港映画のカンフー映画を彷彿とさせるワイヤーアクション
必要以上に飛び散る血しぶきと腕
随所に感じられる日本のVシネマへの愛
マカロニウェスタンの拳銃を刀に変えた“ありえねー”世界観
クエンティン・タランティーノの“ムービー・ワールド”

俺の映画には2つの世界が存在する。
1つは“クエンティンの宇宙”
『パルプ・フィクション』のように、多少の誇張はあっても現実に近い世界だ。
もう1つは“ムービー・ワールド”
“クエンティンの宇宙”に住んでいるキャラクターが見に行く映画の中の世界。
そして“クエンティンの宇宙に”に住んでいるキャラクターたちは“ムービー・ワールド”への入り口でもある。
『キル・ビル』はこの“ムービー・ワールド”で起きる出来事を描いた最初の作品なんだ。
クエンティン・タランティーノ インタビュー
クエンティン・タランティーノが“復讐劇”というテーマで贈るファンタジーがこの『キル・ビル vol.1』(2003)
そして生粋の映画オタクが好きな映画の好きな部分だけを切り取って詰め込んだのがこの『 キル・ビル vol.1 』(2003)
この『キル・ビル vol.1』(2003)のアイディアは『パルプ・フィクション』(1994)の撮影中に思いついたらしい
“キル・ビル”はvol.1とvol.2の2部構成で2004年にvol.2が公開
『パルプ・フィクション』から考えると完成まで10年程の時間をかけた大作
クエンティン・タランティーノらしいと言えばらしいけど、どの作品も凝りすぎ!
今日はそんな『キル・ビル vol.1』(2003)をレビューしてみます
『キル・ビル vol.1』(2003)あらすじ&レビュー

監督 クエンティン・タランティーノ
主演 ユマ・サーマン
出演 ルーシー・リュー ヴィヴィカ・A・フォックス 千葉真一 栗山千明 ダリル・ハンナ マイケル・マドセン
上映時間 113分
“許せない、 許さない”
妊娠を機に殺し屋稼業から足を洗ったザ・ブライド(ユマ・サーマン)は結婚式のリハーサルの最中、属していた組織のボスであるビル(デビッド・キャラダイン)とその配下である4人の殺し屋から襲撃を受ける。婚約者である夫と参列者たちが殺され、妊娠していた彼女も凄惨なリンチにより、4年間の昏睡状態に陥るほどの重傷を負わされ、胎内の子を奪われる。昏睡から目覚めたザ・ブライドは、ビルと4人の殺し屋への復讐に向けて動き始める。
キル・ビル vol.1(2003)
『キル・ビル vol.1』(2003)をレビュー

『キル・ビル vol.1』(2003)が面白い点はここ!
1.ユマ・サーマンの体当たりアクション!
2.「ヤッチマイナァー!!」
3.栗山千明の“ゴーゴーボール”
キル・ビル vol.1(2003)見どころ
それぞれを解説
ユマ・サーマンの体当たりのアクション!

ザ・ブライドを演じたユマ・サーマン
身長181cm
ファッションモデル出身の彼女が魅せるアクロバティックなワイヤーアクション
物語終盤のユマ・サーマンvsクレイジー88の対決は最大の見所!
刀がとにかく似合う!
撮影当時30歳
クレジットにも表記されている”created by Q&U”
これは『キル・ビル vol.1』の企画が「あの企画はどうなってるのよ」とユマ・サーマンに詰め寄られたクエンティン・タランティーノが、彼女の30歳の誕生プレゼントとして制作したのがきっかけだったためだという
ユマ・サーマンの本作にかける気合もハンパない!
紛れもないユマ・サーマンの代表作と言える仕上がりになっている
復讐に燃える1人の女性の悲しみと怒りに満ちたその演技にも注目してほしい
「ヤッチマイナァー!!」

ヤッチマイナァー!!
キル・ビル vol.1(2003) “オーレン・石井” セリフ
東京のヤクザのボス:オーレン石井 演じるルーシー・リューが劇中ユマ・サーマンに向かって放つセリフ
東京のヤクザのボスではあるけれど、中国系アメリカ人
母親は日本人とのハーフなので日本の血も混ざっている
※この事をオーレン石井の前で言うとえらい目に合うので注意
カタコトの日本語で「ヤッチマイナー!!」は一見ギャグにも見えるんだけれど、そこはタランティーノの世界観
そしてルーシー・リューの演技力での押し切りで物語に勢いを持たせている
ユマ・サーマンとルーシー・リューとの雪が舞い散る日本庭園の中での一騎打ち
クエンティン・タランティーノ流“わびさび”の真剣勝負は固唾を飲んで見てしまう程の緊張感
白い雪の中に舞う血しぶきがなんとも風情?あり

栗山千明の“ゴーゴーボール”

女子高生殺し屋:GOGO夕張 を演じる栗山千明
ドスにストラップを付ける所が女子高生っぽい
17歳にして最強の殺し屋
ザ・ブライドとも鎖のついた鉄球“ゴーゴーボール”を操り、互角にやりあう程の実力の持ち主
強さだけじゃなくて栗山千明のキャラが立っていて印象的
女子高生の可愛らしさと不気味さの両方を上手く表現していた
ザ・ブライドの“復讐リスト”にはない脇役ではあるけれど序盤に倒しちゃった“ヴァニータ・グリーン”よりも目立ってた
ちなみに栗山千明のキャストにはクエンティン・タランティーノが深作欣二監督の「バトル・ロワイヤル」(2000)を見て栗山千明に白羽の矢を立てたみたい
※柴咲コウとも悩んだらしい、それも見たかった!

『キル・ビル vol.1』(2003) キャラクター

ザ・ブライド/ユマ・サーマン
コードネーム:ブラック・マンバ
※ブラック・マンバは世界最強の毒蛇
名刀ハットリ・ハンゾウを武器に自身を半殺しにし、お腹の赤ん坊を奪ったビルと4人の元仲間に復讐を誓う

オーレン石井/ルーシー・リュー
コードネーム:コットンマウス
ザ・ブライドの復讐リスト1番目
11歳の時、両親を目の前でヤクザ組織 松本組に殺され、その2年後に、単身、松本久美を壊滅させたハードな過去を持つ。20歳でトップクラスのスナイパーとなり、ビルにスカウトされ暗殺集団DiVASに加入。私設暗殺部隊“クレイジー88”を率いて東京のヤクザ社会の頂点に立っている。

ゴーゴー夕張/栗山千明
女子高生殺し屋
オーレン石井のボディガード
愛らしいルックスとは裏腹に援助交際を迫ってきた男性のボディを無表情に切り裂く残忍な性格の持ち主

ソフィ・ファタール/クレイジー88
オーレン石井の秘書兼通訳&私設軍隊
ソフィ:フランス人と日本人のハーフで頭脳明晰。かつてはビルの配下で秘書をしていたが、DiVAS解散後はオーレンと行動を共にする。殺しのスキルはないが、殺戮の現場で平然と携帯電話をかける常軌を逸した性格の持ち主
クレイジー88:黒スーツとカトーマスクで武装したオーレン石井の私設軍隊。リーダーはカンフーの達人ジョニー・モー。クレイジー88と名乗るが実際に88人かは謎。※こういう所好き。
クレイジー88の中に高橋一生、北村一輝、田中要次、クエンティン・タランティーノが隠れているらしい!

ヴァニータ・グリーン/ヴィヴィカ・A・フォックス
コードネーム:コッパーヘッド
ザ・ブライドの復讐リスト2番目。DiVAS1のナイフの使い手。DiVAS解散後は殺しの世界からは足を洗い、平和な生活を送っていたがザ・ブライドの突然の訪問により家庭内デスマッチを繰り広げる事になる。

ハットリ・ハンゾウ/千葉真一
伝説の刀匠
殺しの世界では伝説の集団・柳生一族の首領にして世界最高の刀鍛冶。28年前に「もう殺しの道具は作るまい」と刀鍛冶の暖簾を下ろし、闇の世界から姿を消した。現在は沖縄に潜伏し、寿司屋を経営。しかしかつての弟子ビルに全てを奪われたザ・ブライドの境遇に胸を痛め。封印していた名刀を再び作る事に。
クエンティン・タランティーノのキャラの創り込みには脱帽!

まとめ

どんな映画でも文句の1つや2つあると思う
“こうすればもっと良かったのに” “あの時の主人公の選択はどうかと思う”とか
僕個人的な意見ではあるけれど、クエンティン・タランティーノ作品にはそれといった文句がない
その理由はクエンティン・タランティーノの答えが見たいからだと思う
彼が選択したセリフを彼が創作したキャラクターで彼が生み出す世界の中でその全てが行われる事によってそれが間違っていたとしても正しいような気がしてしまう
そしてそれが癖になる
この感覚は何度かクエンティン・タランティーノの血しぶきを頭から浴びる事によって成立するのかもしれない

俺は映画のファーストシーンに使う曲が決まらないと撮影を始められないんだ。
今までの作品全てそうだったわけではないけどね。
ファーストシーンで使う曲でその作品が目指すビート、奏でるリズムを決定するんだ。
クエンティン・タランティーノ 『キル・ビル』インタビュー
クエンティン・タランティーノの静寂からの音楽が鳴り響く瞬間
これもクエンティン・タランティーノ節を感じ取れるポイント
細部にまでこだわり抜かれた作品だからこそプロの技を感じ取れる
もしくはそれは考え過ぎでただただ好きな事を好きなだけやってるだけなのかも!?
見れば見るほど色んな映画のオマージュも散りばめられていたりして二度三度楽しめる
この世界観に僕はハマっています