『ワンハリ』時代背景
この映画の時代設定は1960年代
映画を観た人全員がこの時代を生きていたわけではないと思うけれど
映画を観た人全員がたぶんどこかノスタルジックさと懐かしさを感じてしまう
それはクエンティン・タランティーノが当時のハリウッドをリアルに描いているからだと思う
クエンティン・タランティーノの徹底的なこだわり!
クエンティン・タランティーノは1969年を忠実に再現するために、大量のクラシック・カーを調達してハリウッド大通りの建物やビルボードを再創造し、標識や横断歩道、電柱や電線まで当時仕様にチェンジする程の徹底ぶりを発揮
2日間にわたって通りを封鎖し、3ブロックの撮影を敢行した
たった9週間の準備期間で!
その2日間、通りは見物人で溢れ、L.Aの歴史に残る大渋滞を引き起こしたという
アナログで非効率的なかもしれないけれど、その情熱はしっかりと映画の魂になっていた
今日は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のそんな裏話と背景に迫る!
シャロン・テートにまつわる真実
残酷で、陰惨で、醜怪で、何ともやりきれない“真夏の夜の悪夢”のような殺人事件だった。あの可愛いスタア、シャロン・テートが無残にも殺されたのだ
SCREEN 1969年 11月号 抜粋
当時の映画雑誌『SCREEN』ではこのように報じられていた
この事件の犯人は、チャールズ・マンソンと“マンソン・ファミリー”と呼ばれるファミリーたち
それでは一体なぜこの事件は起きてしまったのか
“シャロン・テート殺害事件”の真相はこうだった
シャロン・テートが殺されたのは全くの偶然!
事件の真犯人、チャールズ・マンソンは実はロマン・ポランスキー邸に別の人物がいると思っていた
その人物は、 テリー・メルチャー
カルト集団の教祖として取沙汰される事が多いけど、チャールズ・マンソンは音楽デビューを夢見るミュージシャンでもあった
テリー・メルチャーは“ビーチボーイズ”等をプロデュースした当時の売れっ子音楽プロデューサー
チャールズ・マンソンの音楽に興味を持ちデビューの約束をするが、結局はご破綻
チャールズ・マンソンがそれを恨み“シャロン・テート殺害事件”を引き起こすきっかけとなっていく
たまたまチャールズ・マンソンはテリー・メルチャーの自宅に遊びに行ったことがあるので、
再度テリー・メルチャーの家を訪れるが(この逸話は劇中でも登場)、現在住んでいるのがロマン・ポランスキーだという事をその時に初めて知る
ロマン・ポランスキー邸を間違えて訪れた際に邪険に扱われた事もあってチャールズ・マンソンのイライラはMAX!
その思いを汲み取った“マンソン・ファミリー”が殺害計画を立て、実行へと移すことに
ハリウッドに住む連中が私たちに殺人を教えた
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ワンシーン
劇中ロマン・ポランスキー邸に行く前に、3人のマンソン・ファミリーはこんな事をつぶやくシーンがある
ハリウッド映画を観て育った彼らが連日“ウソの殺人”を繰り返す奴らが私たちにそうさせるんだとばかりに自己を正当化!
また“ヒッピー”達からなる貧しい彼らは、ハリウッドに住む裕福な彼らとの格差にいら立っていたのでしょう
そんな激しい殺意の元に実行された“シャロン・テート殺害事件”
シャロン・テート自体は特に関係のない所で事が進み、
たまたま標的にされてしまったという悲しすぎる偶然が巻き起こした悲劇だったという
ロマン・ポランスキー邸の5人の死体
シャロン・テート以外にも実は4人の男女も同時に殺されていた
コーヒー王の跡取り娘、億万長者のアビゲイル・フォルジャー、その恋人だったポーランド人ヴァイテク・フライコウスキー、シャロン・テートのヘア・スタイリスト、ジェイ・シブリング
※ジェイ・シブリングを劇中ではエミール・ハーシュが演じている
そしてシャロン・テート のお腹にいた8ヶ月の赤ちゃん
いずれもロマン・ポランスキーの友人であり、金と力と美貌と若さを兼ね備えたハリウッドの上流階級の人々
※もう1人は通りがかりに犯行グループにたまたま声をかけてしまった一般人も殺されている、可哀そう過ぎる・・・
特に妊娠8ヶ月のシャロン・テートは全身を16箇所もめった刺しにされ死んでいた
扉には彼女の血で“PIG(豚)”と書き殴られていた
ロマン・ポランスキーはたまたま、映画撮影のためロンドンにおり現場にはいなかった
ロマン・ポランスキーは、生まれることなく死んだわが子にシャロン・テートと自らの父の名を取って“ポール・リチャード”と名付け、テートとともに埋葬したという
マンソン・ファミリーとスパーン映画牧場
チャールズ・マンソンは自らをキリストの復活、悪魔とも称して“ヒッピー・コミューン=マンソン・ファミリー”を形成し、音楽、セックスやドラッグで社会からドロップアウトした若者たちを意のままに操っていた
本作でも“マンソン・ファミリー”たちが実際に暮らしていた“スパーン映画牧場”でチャールズ・マンソンとともに暮らすさまが不気味に描かれている
裏話として、リアリティを求めるクエンティン・タランティーノは製作チームに“スパーン映画牧場を創る”というミッションを与えた
実際のスパーン映画牧場は焼失してブルドーザーで埋まっているため、その近くにある“コリガンヴィル牧場”に再現することとなったよう
地元住民からは「マンソン・ファミリーの映画を撮っている」と反対運動もあり苦労が堪えなかったという
4.メキシカンレストラン『エル・コヨーテ』
シャロン・テートと友人たちが事件の直前にディナーを食べに繰り出した、老舗のメキシカン・レストラン“エル・コヨーテ”
壁にはハリウッド・スターのサイン入り写真がずらりと並び、クリスマスライトが1年中、ダイニングテーブルを明るく照らしている
映画の中で妊娠していたため気分がすぐれないシャロン・テートが座っていたテーブルは、実際に彼女が友人たちと食事をした場所で撮影された
説明なしには絶対にわからない“何気ないシーンに込められたリアリティー”がクエンティン・タランティーノ作品の醍醐味!
まとめ
シャロン・テート殺害事件という真実とチャールズ・マンソンという悪の象徴
2つのテーマがありながらクエンティン・タランティーノ節はしっかりと健在!
というのも本作の真のテーマが2人の主人公リック・ダルトンとクリフ・ブーフの友情だから!
ハリウッドの栄光と影
時代の変化に必死に適応しようともがく2人の旬を過ぎたスター
現実と虚構が入り混じるパラレルワールドの世界
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は“クエンティンの宇宙”の中で起きた現実
このややこしい設定が“なんだか面白そう”という方にはきっと見てみるといいかも
『BANAWOOD PARK』でも解説!